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『管理会計と原価計算の革新を目指して』
(PDF 12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田 直芳

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zoom RSS 公認会計士高田直芳:ソフトバンクの経営戦略と企業価値そして機会損失の算定方法

<<   作成日時 : 2016/08/03 01:00   >>

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企業価値とファイナンスの
革新を目指して<第4回>

ソフトバンクの経営戦略と企業価値
そして機会損失の算定方法


今回(「企業価値とファイナンスの革新を目指して」シリーズ第4回)は、ソフトバンクです。
まず、このシリーズの目次を、以下に掲げます。
【関連ブログ】企業価値とファイナンスの革新を目指して 

ソフトバンクについては、次の拙著『高田直芳の実践会計講座「経営分析」入門』第12章第4節において取り上げました。
【資料1】

上記【資料1】の「第4節 上場企業の実務解」4ページ目の〔図表12−38〕では、2013年3月期までのソフトバンクを描写しました。

2013年4月以降から現時点までのソフトバンクの企業価値や理論株価が、どのように推移しているのかは、私(高田直芳)と顧問契約を締結している企業との勉強会資料で説明しています。

以下では、その概要を紹介します。


まず、上記【資料1】の「第4節 上場企業の実務解」4ページ目の〔図表12−38〕を見ると、ソフトバンクは2012年以降、負債を圧縮する傾向にあったことがわかります。

ただし、その〔図表12−38〕から明らかなように、負債を圧縮する経営戦略は、ソフトバンクの企業価値を低めました。
すなわち、その期間の株式時価総額は、企業価値の最大化を実現していなかった、ということです。

なぜか。
通信業界・鉄道業界・流通業界のように、規模の経済(スケール・メリット)を追求するビジネスモデルの場合、売上高の拡大が、利益の拡大に結びつきます。

このようなビジネスモデルの場合、遮二無二、市場シェアを獲得する経営戦略が、企業価値の最大化を実現させます。


「規模の経済(スケール・メリット)」については、次の書籍393ページを参照。
マンキュー経済学T
ミクロ編(第3版)

東洋経済新報社
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注意しなければならないのは、企業規模を拡大したその先に、需要が確実に存在することです。

企業規模の拡大(スケール・メリット)は、十分条件ではなく、必要条件です。
高校1年のときに習った「集合論」を思い出してください。

需要のアテもなく企業規模を拡大することは、過剰設備・過剰負債を抱えることになります。

ソフトバンクが、英アーム・ホールディングスの買収を決めたのは、「その先の需要」が、十分条件を満たしていたからでしょう。


そこで問題となるのが、ファイナンスです。
【資料2】日本経済新聞2016年7月19日

買収資金の一部に充てるため、みずほ銀行と借入限度額1兆円のつなぎ融資(ブリッジローン)契約を結んだ。

ソフトバンクグループは16年3月末時点で、自己資本の4.5倍に相当する12兆円弱の有利子負債を抱える。

13年の米携帯事業者スプリントの買収で急膨張した有利子負債がさらに増え、財務内容への懸念が高まる可能性もある。


上記の記事にある「財務内容への懸念」とは何か。
ファイナンスに関する教科書や、ビジネススクールなどでは、次の図表を用いて説明します。
【資料3】MM理論の最適資本構成
画像

上記【資料3】の見方については、【資料1の「】第2節 自己資本比率信仰のウソを見抜け」2ページ目で説明しました。

【資料3】にある線分CEや線分DFで表わされる「倒産リスク」が、【資料2】の記事にある「財務内容への懸念」に該当します。

なお、【資料2】の記事にある「4.5倍」とは、【資料3】の横軸上にある線分OJを線分JKで割った値です。
これが、いわゆる「D/Eレシオ」です。

上記【資料3】にある点Eは、企業価値(縦軸)を最大にするところであり、ここから垂線を下ろした点Jが、いわゆる「最適資本構成」を表わします。


確実に需要が見込める市場がある場合は、企業規模(スケール・メリット)を追求して、市場シェアの獲得を目指したほうが望ましい、と先ほど述べました。

その場合、「他人資本による資金調達」と「自己資本による資金調達」とでは、どちらが機動性に優れているかというと、前者(他人資本による資金調達)です。

また、資本コスト率の面では、ROE(自己資本利益率)が、自己資本コスト率の足かせになります。
【資料4】日本経済新聞2016年7月30日『大機小機』】

例えば、ある助言会社では、過去5年間の平均自己資本利益率(ROE)が5%未満で改善傾向がないと取締役選任議案に反対推奨するとの方針がある。


なぜ、足かせになるのかは、【資料1】の拙著370ページの下から4行目を参照。

一方、現在の他人資本コスト率は、ゼロ金利どころか、マイナス金利の時代。
そうなると、機動性の面だけでなく資本コスト率の面でも、他人資本による資金調達のほうが、圧倒的に有利になります。

以上の説明から明らかなことは、【資料3】にある線分EJは、もっと右方へシフトしたほうがいい、ということです。


では、どこまで右方シフトしたらいいのか。

残念ながら、【資料3】を異口同音に講義する、現在の経済学やファイナンス理論では、その一般公式を誰も提示していません。

惰眠を貪る【資料3】に対して、ファイナンスの一般公式と実務解を提示したのが、次の【資料5】です。
【資料5】最適資本構成タカダ理論
画像

上記【資料5】の描きかたについては、【資料1】の「第3節 最適資本構成の問題を中央突破する」9ページ〔図表12−29〕を参照してください。


上記【資料5】で描かれている曲線APBは、観念論で描かれた【資料3】の曲線ABEFを、具体化したものです。

その具体化を証明するものとして、上記【資料5】では、次の【資料6】に示す方程式を示しています。
【資料6】タカダ式企業価値方程式


上記【資料6】の方程式にある「 s 」が他人資本コスト率、「 t 」が自己資本コスト率、「 v 」が他人資本比率、「1−v 」が自己資本比率を表わします。
【資料7】日本経済新聞2016年7月23日『選ばれる会社(上)(市場の力学)』

金融危機やリーマン・ショックを経て日本の経営者の脳裏に「借金=悪」との図式が刻まれた。だが、マイナス金利時代の常識は違う。

トヨタ自動車の金融子会社が発行した期間3年の社債は利率が年0.001%だ。1億円借りても毎年1000円払えばいい。

市場ではマイナス金利の社債も時間の問題と見る。


社債の利率が0.001%の場合、「最適資本構成の実務解」はどうなるか。
残念ながら、【資料3】からは、実務解を得ることができません。
経済学者は誰一人として、手も足も出ないのです。

それに対して、【資料6】の方程式にある「 s 」に0.001%を代入すると、【資料6】にある線分PRは、もっと右方へ向かえ、という実務解を提示します。
これが「最適資本構成タカダ理論」です。


上掲の日本経済新聞では、次の記事が続きます。
【資料8】日本経済新聞2016年7月23日『選ばれる会社(上)(市場の力学)』

ソフトバンクが志向するのは借金を巧みに使い成長する「レバレッジ経営」だ。(略)借金をためらい有望な投資先を逃す機会損失こそが最大の敵と説く。

今や上場企業の6割近くが実質的に無借金だ。借金を賢く使うのにこれほど条件が整った時はない。リスクを恐れ無借金に安住すれば成長力も市場の評価も得られない。


マイナス金利時代では、【資料5】にある線分PRは、かなり右方に位置します。
その線分PRに、企業の実態を近づけようというのが、レバレッジ経営です。

一方、無借金経営は、【資料5】の点A近くにあることを意味します。

【資料5】の縦軸に注目してください。
点Aの企業価値は、点Pの企業価値を大きく下回るのです。

その高低差が、上掲の記事にある「機会損失」です。
上記【資料5】の最適資本構成タカダ理論によれば、機会損失の金額の算定も可能です。


学者やメディアやコンサルティングファームの狡猾なところは、観念的な発言に終始することです。
上場企業の取締役会でも【資料3】の図表が用いられ、社外取締役などは「マイナス金利の時代なのだから、借金を増やし、【資料3】にある点Jをもっと右へシフトさせよ」と主張します。

ところが、【資料3】の図表自体が「絵に描いた餅」であるため、数値の裏付けがない。

マイナス金利の時代に、借金活用を唱えるのであれば、【資料6】のような一般公式を提示し、【資料5】のように具体的な図表を描いてその実務解を提示すべきでしょう。

数値の裏付けもなく、観念的な企業価値や機会損失を語る連中を見てると、ひどく情けない気分になる。

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