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新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』
(PDF 32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田 直芳

日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』
(PDF 12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田 直芳

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zoom RSS 公認会計士高田直芳:原価データを粉飾する上場メーカーが存在する

<<   作成日時 : 2016/03/12 01:00   >>

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原価データを粉飾する
上場メーカーが存在する

『高田直芳の実践会計講座 原価計算』
補足説明



もうすぐ3月決算を迎えます。
IFRS基準(国際会計基準)の影響で、12月決算へ変更する上場企業が多くなったとはいえ、やはり3月31日は一つの節目です。

コスト計算やコスト管理に携わる人たちにとって、頭を抱えるのが、原価差額(原価差異)の異常値を、経営幹部にどうやって説明するか、という問題です。

報告を受けた経営幹部は、その異常値を、外部の利害関係者に対して、どうやって隠蔽するか、という問題です。

結論を先に述べると、すべての上場メーカーで行なわれているコスト計算やコスト管理は、出鱈目もいいところであり、世のオトナたちは誰一人としてその原因を解明できず、アウトプットされた異常なデータを隠蔽することに汲々としています。

そのカラクリを、中学生でもわかる話で、暴露しましょう。


まず、原価差額(原価差異)は、次の【資料1】の「A」と「B」の差額で求められます。
【資料1】
  1. 予定原価(または標準原価)
  2. 実際原価(または実績原価)

企業実務では、予算実績差異分析(予実分析)というものを、必ず実施しています。

上記【資料1】の A.が予算に相当し、B.が実績に相当します。

これを、コスト計算やコスト管理のレベルに落とし込んだものを、原価差異分析といいます。


予算実績分析では、最初に予算が立てられます。
原価差異分析では、次の【資料2】の図表を用いて、予算が立てられます。
【資料2】公式法変動予算の図(シュラッター図)
画像

上記【資料1】を「公式法変動予算の図」といい、昭和37年(1962年)に、企業会計審議会で制定した会計基準『原価計算基準』で定められています。
別名「シュラッター図」ともいいます。


驚くべきことは、『原価計算基準』という会計基準は、昭和37年(1962年)に制定されて以来、一言一句、改正されたことがない、という事実です。

コスト計算やコスト管理を解説した書籍では、そのすべてで、【資料2】の図表が掲載されています。
簿記検定の1級はもちろん、2級のテキストでも、【資料2】の図表が掲載されています。

昭和37年(1962年)といえば、東海道新幹線が開業する1年前、東京オリンピックが開催される1年前、そして1ドル360円の固定相場制の時代です。

その時代から、一言一句の改正なし。
学界も実務界も思考停止してきた歴史を、この会計基準の文言に見ることができます。


それはさておき、上記【資料2】の図表から、次の【資料3】に示す専門用語が定義されます。
【資料3】
    ∠CBE …… 予定配賦率(または標準配賦率)
    ∠CBD …… 変動費率
    ∠DBE …… 固定費率

予定配賦率・標準配賦率(∠CBE)は、変動費率(∠CBD)と、固定費率(∠DBE)に分解されます。

それぞれの「率」に、「人の作業時間」や、「機械装置の稼動時間」を乗ずると、【資料1】A の予定原価(標準原価)や、変動費および固定費を求めることができます。

そして、【資料1】B の実際原価(実績原価)と比較することにより、予実分析や原価差異分析が行なわれます。

以上の分析作業は、すべての上場メーカーで行なわれています。
なにしろ、昭和37年(1962年)以来、オカミがお墨付きを与えている方法なのですから。


ところが、です。

上場メーカーで行なわれている原価差異分析は、出鱈目もいいところ。
出鱈目な原価差異分析によって炙り出された異常値を、隠蔽しているのが実態です。

どこが出鱈目なのか。
原因は、【資料2】の図表にある、右上がりの線分BCにあります。

線分BCは予定原価(標準原価)を表わしており、これは1次関数で描かれています。
1次関数というのは、利息の計算方法でいえば、単利計算のこと。

つまり、上場メーカーで用いられている予定原価計算制度や標準原価計算制度は、単利計算構造に基づいていることがわかります。

直接原価計算制度・活動基準原価計算制度・原価企画などと名を変えても、同じ穴のムジナ、これらはすべて単利計算構造に基づいています。


上記【資料1】B の実際原価(実績原価)も単利計算構造であるならば、【資料1】の A と B の差から求められる原価差額(原価差異)に、異常値が現われることはありません。

ところが、です。
製造業に限らず、流通業を含めて、あらゆる企業で次の【資料4】に示す事実を観察することができます。
【資料4】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。

つまり、【資料1】の B にある実際原価(実績原価)の本質は、複利計算構造にあることがわかります。

したがって、【資料1】の A にある予定原価(標準原価)も複利計算構造で構築されなければ、正しい予算実績分析や、正確な原価差異分析など、できるわけがない。

それを高等数学を用いて論証したのが、次の【資料5】に示す受賞論文です。
【資料5】
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』(PDF 32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田直芳

国立国会図書館所蔵の論稿集は、こちら。
日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF 12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田直芳

上記の受賞論文を含めて、私(高田直芳)が創設した会計学を、「会計物理学」と称しています。


さて、企業実務では、どのようなことが行なわれているのでしょうか。
すべての上場メーカーで取り組まれているのは、「単利計算構造の予算」と「複利計算構造の実績」の比較です。

「複利運用された預金利息」を、「単利計算構造の1次関数」で分析したところで、異常値が炙り出されるに決まっています。
こんなこと、中学生でも理解できる。

ところが、昭和37年(1962年)以来、上場メーカーに属するオトナたちは、誰もその異常事態を認識してこなかった。
問題視されなかったのは、社内で、巧妙な隠蔽工作が行なわれてきたからです。

コスト計算やコスト管理を舞台にした、粉飾決算と言い換えてもいいでしょう。


次の拙著301ページでは、粉飾決算には「善意のもの」と「悪意のもの」があることを紹介しています。
[決定版]
新・ほんとうにわかる経営分析

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上場メーカーで採用されている原価計算制度は、「善意の粉飾決算」です。
【資料6】高田直芳著『[決定版]新・ほんとうにわかる経営分析』301ページ

悪意ある粉飾は、粉飾決算であることを「知って」会計処理を行なうことです。これは、当事者を説得することが容易です。なぜなら、自分たちのやっていることが、不正であることを知っているから。

自分たちだけではどうにも引くに引けぬ事態になり、第三者から指摘されることを待っている、と考えることができます。

始末におえないのが、善意の粉飾です。自分たちの行なっていることが粉飾決算だと理解できない場合、これを説得するのは至難のワザです。


半世紀以上も前に制定された会計基準に媚びへつらって、上場メーカーは何をやっているんだか。

「【資料2】の公式法変動予算の図は、すべての教科書に掲載されているのだから、正しいのだ」と主張するのは、実務がどのようなものであるかを理解せず、権威主義の前で膝を屈しているようなもの。

単利と複利の違いもわからぬとは、「上場企業」の看板が泣いている。

【関連ブログ】
〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕

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