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zoom RSS 公認会計士高田直芳:不適切会計と不正会計の狭間で、決算書が泣いている

<<   作成日時 : 2015/08/01 01:00   >>

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不適切会計と不正会計の狭間で、決算書が泣いている


鬼の首を根こそぎ取らないと気がすまない一部のメディアはさておいて、東芝問題は一応の収束を見せました。

せっかくの機会ですから、東芝の調査報告書を利用して、「会計とは何か」を純粋に考えていくことにしましょう。

東芝の調査報告書は、次の84ページものの「要約版」を用います。

東芝 第三者委員会調査報告書
<要約版>PDF 84ページ

調査報告書では「社長」を「P」と呼ぶことになっていて、当初、「これは何かの冗談か」と思いました。
どうやら本気らしい。

大企業のトップにまでのぼりつめて、「ぴーちゃん」って呼ばれるのは、なんか嫌だな。

冗談はともかく、報告書2ページの上段に、過年度修正額(税引前損益)の一覧表が掲載されています。

この一覧表の右端に「▲1518億円」があります。
これが今回の修正額らしい。

視線を左に移動して、2008年度から2014年度までの金額を見ていて、「あれれっ?」と首を傾げましたた。
2010年度と2014年度が、プラスで表示されているではないですか。

いまどきの会計監査人は、企業から提示される資料に絶大な信頼を寄せ、自ら電卓を叩いて検算しないようですが、これくらいは電卓がなくても暗算で確かめられます。

「第三者委員会への委嘱事項」の行の、プラスとマイナスを差し引きすると、確かに▲1518億円になります。

なるほどぉ、2010年度と2014年度は、「逆粉飾」だったわけだ。
「粉飾」を解消しようという気はあったようです。


読売新聞と日本経済新聞は、「不適切会計」を用いています。
朝日新聞と毎日新聞は、「不正会計」または「不正決算」を用いています。

東芝の調査報告書では、「経営者による不正リスク」という語はありますが、会計処理については「不適切」で通しています。

以前の関連ブログ『続・「不正会計」と「粉飾決算」の境目』でも記述したように、メディアや東芝は、刑事事件にまで発展することがなければ、「粉飾」という語を用いないようです。

逆にいえば、「粉飾」という語には、極悪非道なイメージが付いてしまった感があります。


いや、それは違うでしょう。

粉飾というのは、単純に「利益の過大表示」のことをいいます。
その反対に、「利益の過小表示」が、逆粉飾です。

粉飾や逆粉飾というのは、利益が過大か過小かの違いを意味するだけであって、そこには、会計処理を行なう者の「意図」は存在しないのです。


一方、「不正」や「不適切」の語源は、どこにあるか。

これは、関連ブログ『東芝で今度は「利益の先食い」と「評価減の先送り」』で紹介したように、日本公認会計士協会『不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項について』にあります。

そこでは、「不適切な会計処理」を次のように定義しています。

本研究報告では、不適切な会計処理の定義を「意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる誤り」とする。

意図的に行なうものを「不正」といい、意図的でないものを「誤謬」といいます。


以上の説明を表にまとめると、次の【資料1】になります。

【資料1】
 

粉 飾
(利益の過大表示)

逆 粉 飾
(利益の過小表示)

不 正

(A)

(B)

誤 謬

(C)

(D)

正当な理由
(会計基準)

(E)

(F)


東芝の調査報告書にある、2010年度と2014年度は、【資料1】の(B)です。
それ以外の年度は、【資料1】の(A)です。

上記【資料1】の(C)と(D)には何が該当するかについては、関連ブログ『続・「不正会計」と「粉飾決算」の境目』で説明しました。


今回、【資料1】で新たに追加したのは、(E)と(F)です。

例えば、M&Aによって、のれん(営業権)を計上した場合で、これを償却しなかったときは、粉飾(利益の過大表示)となり、【資料1】の(A)に該当します。

ところが、日本の国内基準から、国際会計基準(IFRS基準)へ変更した場合は、国際会計基準(IFRS基準)が錦の御旗となり、のれんを償却しないことについて正当な理由があります。
したがって、【資料1】の(E)に該当します。

また、商品の販売基準を、出荷基準から、検収基準へ変更したとしましょう。
これは、逆粉飾(利益の過小表示)となって、【資料1】の(B)に該当する可能性があります。

ところが、「国際会計基準(IFRS基準)を採用したため」という錦の御旗があれば、【資料1】の(F)になります。


東芝の調査報告書や、日本経済新聞および読売新聞が「不適切な会計処理」を多用するのは、「意図しない誤謬もあるのですよ」という温情を、世間に訴えたいからなのかもしれません。

「粉飾」を刑事事件にまで結びつけるのであれば、「逆粉飾」は勲章でももらえるのかな。
むしろ、逆粉飾のほうが、脱税案件として、刑事事件になるのだけれど。

朝日新聞や毎日新聞が「不正会計」を多用するのは、「大企業を許すまじ」と考えているのかもしれません。


人によって「不適切会計」と呼んだり、「不正会計」と呼んだりするのは、【資料1】の「粉飾」だけでなく、その右隣にある「逆粉飾」の意を含めてのことなのかもしれないなと。

行間をそこまで読むか、読ませるかは、書き手と読み手の知恵くらべか。

不正会計であろうと、不適切会計であろうと、「這っても黒豆」であって、どうにでも解釈可能なのが、いまの会計制度。

ゴキブリを踏みつけた足の裏を見て、「あちゃ〜」と腹を立てても始まらぬ。

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