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zoom RSS 公認会計士高田直芳:D/Eレシオに一般的な目安はあるのか

<<   作成日時 : 2015/07/09 01:00   >>

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D/Eレシオに「一般的な目安」はあるのか
[決定版]新・ほんとうにわかる経営分析 補足説明


2015年7月4日付の日本経済新聞で、次の記事が掲載されていました。
日本経済新聞2015年7月4日

ネットDEレシオは連結有利子負債から手元資金を引いた純有利子負債が自己資本の何倍あるかを示し、一般的に1倍が健全性の目安となる。


上記の記事で「一般的に〜目安となる」とあるのが、クセ者。

この記事を読んで「よし、我が社も、ネットD/Eレシオを、1倍にするぞ」と、社長が財務部長(CFO)を焚きつけやしないだろうか、と心配になりました。

今回のブログは、次の関連ブログの前哨戦です。
【関連ブログ】
まず、「ネットD/Eレシオ」と、「フツーのD/Eレシオ」とを、次の【資料1】の企業で調べてみました。

【資料1】
 

ネットD/Eレシオ

D/Eレシオ

JX

1.18倍

2.83倍

出光興産

1.52倍

3.65倍

セブン&アイ

▲0.02倍

1.28倍

イオン

0.83倍

5.54倍

高島屋

0.19倍

1.44倍

武田薬品

0.03倍

1.01倍

アサヒ

0.42倍

1.20倍

三菱商事

0.83倍

2.01倍

三井物産

0.83倍

1.98倍

ニッサン

1.21倍

2.52倍

JR東日本

1.10倍

2.32倍

近鉄

3.47倍

5.13倍

ソフトバンク

2.93倍

6.41倍


上記【資料1】にあるネットDEレシオを見ると、武田薬品は異常に低く、近鉄とソフトバンクは異常に高く、おまけにセブン&アイはマイナスであり、およそ「一般的な目安」とは異なる結果です。

なぜ、「一般的な目安」に当てはまらない上場企業が多いのでしょうか。
これを、理論面と実務面で検証します。


まずは理論面から。

上記【資料1】の右端にある「D/Eレシオ」は、【資料2】のように分解されます。
【資料2】
    (D/Eレシオ)=(他人資本比率)÷(自己資本比率)

なお、日本基準のD/EレシオとIFRS基準のD/Eレシオとで、その計算構造が異なる問題点については、次の関連ブログを参照。
【関連ブログ】

さて、メディアやコンサルタントはときどき、「自己資本比率は50%以上が、一般的に望ましいといわれる」と主張します。
これは「他人資本比率は50%以下が、一般的に望ましいといわれる」と同義です。

したがって、上記【資料2】の式より、「D/Eレシオは1倍以下が、一般的に望ましいといわれる」という結論が導かれます。

クセ者は、「一般的に望ましい」と、「〜といわれる」の2箇所にあります。

「一般的に望ましい」というのであれば、それを証明した一般公式が存在しなければなりません。


ところが、自己資本比率が50%以上であることが望ましいことを証明した一般公式は、「存在しない」とするのが、現在の経済学やファイナンス論の通説です。
次の書籍の65ページで、明確に言及されています。

【資料3】
企業価値と会計・監査
会計とファイナンスの接点を探る

日本公認会計士協会東京会
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したがって、次の【資料4】に示す3つの命題は、すべて「偽」であることがわかります。
【資料4】

  • 自己資本比率は50%以上が、一般的に望ましい。

  • 他人資本比率は50%以下が、一般的に望ましい。

  • D/Eレシオは1倍以下が、一般的に望ましい。


メディアやコンサルタントが狡猾な点は、「一般公式があるのかどうか」を自ら確かめないで、「一般的に望ましいといわれる」という逃げ口上を用いているところにあります。

「D/Eレシオは1倍以下が望ましい」「自己資本比率は50%以上が望ましい」と主張している人を見かけたら、「この人は、経済学やファイナンスなどを学んでいないのだな」と断定して差し支えありません。

最悪なのは、自ら調べることもなく、他者の権威に便乗して、「D/Eレシオは1倍以下が望ましい」「自己資本比率は50%以上が望ましい」と主張する人たちです。


では、一般公式は存在するのか、しないのか。
これについては、次の【資料5】に示すブログで、その下にある上場企業14社の決算データを用いて論証しています。

【資料5:関連ブログ】
一般公式や実務解を示さずに「企業価値」を得意気に語る人々がいる
  • 小田急電鉄
  • 阪急阪神ホールディングス
  • 田辺三菱製薬
  • 武田薬品工業
  • ソフトバンク
  • KDDI
  • 日産自動車
  • 東レ
  • コマツ
  • 山崎製パン
  • イオン
  • セブン&アイホールディングス
  • ニチイ学館
  • オリエンタルランド
  • (東京ディズニーランド)

    上記【資料5】に示したブログの内容を、さらに具体的に論証したのが、次の【資料6】に示す書籍です。

    【資料6】
    高田直芳の実践会計講座
    「経営分析」入門

    日本実業出版社
    高田 直芳
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    次に、実務面から、上記【資料1】を検証します。

    武田薬品のネットD/Eレシオは、なぜ低いのでしょうか。
    それは、成功するかどうか不明な新薬開発という、リスクを取りに行くビジネスモデルだからです。
    株式投資やFX投資を、借金で行なってはならないのと同じ理屈です。

    近鉄とソフトバンクのネットD/Eレシオは、なぜ高いのでしょうか。
    それは、数十万人・数百万人という消費者、しかも安定した需要が見込める消費者を相手とするビジネスモデルの場合、スケールメリット(規模の経済)を追求することが重要だからです。

    高島屋のネットD/Eレシオは、なぜ低いのでしょうか。
    百貨店業界が、リスクの高いビジネスモデルだからではありません。
    百貨店というビジネスモデルに、行き詰まり感があるからです。

    セブン&アイのネットD/Eレシオは、なぜマイナスになるのでしょうか。
    セブン&アイは、イオンや近鉄やソフトバンクのように、スケールメリット(規模の経済)を追求するビジネスモデルなのですから、ネットD/Eレシオは1倍を超えていないと、おかしい。

    それが逆にマイナスになるのは、業績好調なセブンイレブンによって、巨額のキャッシュが流れ込んでくるからです。


    2015年7月4日付の日本経済新聞では、「石油元売り大手の財務改善が遅れている」とありました。
    財務を改善するのは、“ know how ” の話にとどまります。

    なぜ、財務を改善する必要があるのか、という “know why ” にまで踏み込まないと、企業の業績を評価したとはいえません。

    改めて問います。
    なぜ、財務を改善する必要があるのか。

    理由は、JXや出光興産は、資源開発というリスクを抱えていることと、為替相場によって業績が左右されやすいというリスクを抱えているからです。

    D/Eレシオや自己資本比率を「一般的な目安」と主張するメディアやコンサルタントなどの虚言に、振り回されないようにしたいものです。

    【関連ブログ】
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