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新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』
(PDF 32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田 直芳

日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』
(PDF 12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田 直芳

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zoom RSS 公認会計士高田直芳:自己資本利益率ROEの最適解または理論値を求めるには

<<   作成日時 : 2016/09/06 01:00   >>

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企業価値とファイナンスの
革新を目指して<第6回>

自己資本利益率ROEの最適解
または理論値を求めるには



昨年来(2015年)、経済系の新聞や雑誌で、見飽きるほど登場する「自己資本利益率ROE」。
“ Return on Equity ”の略称であることは、いわずもがなの話です。

ROEは、次の【資料1】の式で表わされます。
【資料1】
    自己資本利益率ROE
        =(当期純利益)÷(自己資本)

日本独自の会計基準に基づくROEと、国際会計基準(IFRS基準)のROEとでは、【資料1】の右辺第1項(当期純利益)および右辺第2項(自己資本)それぞれの算出方法が異なります。

どのように異なるのかは、次の【資料2】に掲げる拙著128ページをご参照。
【資料2】
[決定版]
新・ほんとうにわかる経営分析

ダイヤモンド社
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上掲書128ページ〔図表78〕が日本基準のROEであり、その下にある〔図表79〕がIFRS基準のROEです。
両者を見比べると、一口にROEといっても、その計算構造がまるで異なることがわかります。


日本経済新聞の記事では、ROEの平均値が紹介されています。
〔日本経済新聞2016年8月13日〕

マイナス金利下で企業の資金調達手法が多様化し、ROEにも改めて注目が集まっている。

上場企業のROEは7.8%と2年連続で低下。海外投資家を中心に早期に2ケタへの底上げを求める声は多い。

〔日本経済新聞2016年4月12日〕

ROEは業種によって平均的な水準が異なるが、株式市場では8%が一般的な「合格ライン」とされる。

機関投資家は企業に投資した見返りとして年8%程度のリターンを求めているとされており、ROE8%以上の企業はその水準を満たすことになるからだ。

このため、ROEが8%を超えるとその企業の株価も上がりやすくなる。


上記の記事を読むと、今回も登場したぞ、「一般的に 〜 とされる」という表現が。
これは多くのメディアが好んで用いる常套句であり、次のように、いくつかの含意があります。

1つめは、「私自身は検証していません」という意。

2つめは、「とりあえず他人の尻馬に乗る」という意。

3つめは、「間違っていた場合、私に責任はありません」という意。


つまり、「一般に 〜 とされる」という表現は、「おいしいとこどり」の逃げ口上なのです。

似たような表現に「関係者の話によると 〜」というのもあります。
テレビの情報番組などで、好んで用いられる常套句です。


で、ROE8%が、一般的な合格ラインだって?

その話、ちょっと待った!

以下で、「一般に 〜 とされる」話が、如何に出鱈目なものであるかを検証してみましょう。


上記【資料1】の右辺は、次の【資料3】の右辺に書き換えることができます。
【資料3】
    自己資本利益率ROE
        =(総資本利益率ROA)÷(自己資本比率)

上記【資料1】から【資料3】への展開方法については、次の【資料4】に示す拙著75ページ〔図表2−11〕をご参照。

その〔図表2−11〕の式では、自己資本比率の逆数を、「財務レバレッジ」としています。
【資料4】
高田直芳の実践会計講座
「経営分析」入門

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上記【資料3】の右辺で注目したいのは、第2項にある自己資本比率です。
この自己資本比率については、「一般に50%以上が望ましい」とされています。

出ました、ここにも「一般的に 〜 とされている」という表現が。

「自己資本比率は50%以上が望ましい」という主張が、如何に出鱈目なものであるかは、次の【資料5】の関連ブログで、小田急電鉄・田辺三菱製薬・ソフトバンク・日産自動車・セブン&アイHDなどの具体的な事例を用いて論証しました。
【資料5】関連ブログ

上記【資料5】で論証したように、業種・業態・業界によって、【資料3】右辺第2項にある自己資本比率は、大きく異なるということ。

したがって、【資料3】右辺第1項にある総資本利益率ROAと、右辺第2項の自己資本比率との間で、一定の比例関係がない限り、「ROE8%」という合格ラインなど、「一般には存在しない」のです。


では、その「一定の比例関係」を論証した学術論文や書籍は存在するのか。
私(高田直芳)は、寡聞にして知りません。

「ROE8%が合格ラインである」というのは、理論面でも実証面でも何ら根拠がないにもかかわらず、人づてに伝わっていくうちに、いつのまにか「真実」に転化してしまったようです。

このような例を、個人的に「一虚万実」という造語で呼んでいます。
語源は「一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝う」にあります。

2012年にノーベル生理学医学賞を受賞した山中伸弥先生の言を拝借するならば、「阿倍野の犬実験をするな」と表現することもできます。
【関連ブログ】

先日、ある政治家が、「メディアは批判するばかりで、責任を負わない」と発言していました。
けだし、名言であります。

私(高田直芳)は、、「批判するなら対案を出せ」「その対案は、他人のフンドシを利用したものではなく、オリジナルのものであれ」をモットーとしているので、その対案とやらを、以下で紹介しましょう。


上記【資料1】や【資料3】の自己資本比率ROEは、さらに次の【資料6】のように展開することができます。
【資料6】デュポン方式
    自己資本利益率ROE
        =(売上高利益率)×(総資本回転率)×(財務レバレッジ)

上記【資料6】を、「デュポン方式」といいます。

日本経済新聞で、次の記事が掲載されていました。
【資料7】〔日本経済新聞2016年6月23日〕

日本のROEが低いのは販売費・一般管理費が過大なため――。SMBC日興証券は5月下旬、こんなリポートをまとめた。

ROEを3要素に分ける「デュポン分析」によると、財務レバレッジと総資産回転率は米国と遜色ない。

目立つのは売上高純利益率の低さだ。その要因が過大な販管費にあるという。


上記【資料7】の記事の最後に、【資料6】各項目の具体的な実績値が、日米比較で掲載されていました。


実績値であれば、誰が計算しても「同じ値」を算出することができます。

日本経済新聞社『日経会社情報』や、東洋経済新報社『会社四季報』に掲載されているROEも実績値ですから、『日経会社情報』の実績ROEと『会社四季報』の実績ROEは必ず一致しています。
当たり前といえば、当たり前の話です。

ところが、です。
「予想ROE」のほうは、『日経会社情報』と『会社四季報』とでは、微妙に異なります。
各社で独自性を打ち出そうとしているのですから、これも当たり前といえば当たり前の話です。


本ブログで問題としているのは、「予想」ではありません。
「最適解」または「理論値」です。

次の方針を立てます。
【資料8】ROEの最適解または理論値を求める際の方針

  1. 最適ROEは、現有の経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間・情報など)を最大限に活用して達成されるものであること

  2. 最適ROEは、数週間後・数か月後・数年後に期待される(予想される)ROEではなく、「ある一定時点で求めた実績値」に対して、「その実績値を求めた時点の、あるべきROE」であること

  3. 最適解や理論値というからには、誰が計算しても「同じ値」が算出されなければならない(客観的なものであること)


上記【資料8】の方針は、次のブログで求めた「理論株価」の方針と同じです。
【関連ブログ】

上記【資料8】の方針に基づき、上記【資料6】のデュポン方式を拝借して、自己資本利益率ROEの最適解または理論値を模索してみます。

その前に注意すべきこと。
【資料6】右辺第2項の「総資本回転率」を構成する売上高と総資本は、右辺第1項の構成要素たる「売上高」と右辺第3項の構成要素たる「総資本」とでそれぞれ相殺されますから、【資料6】右辺第2項(総資本回転率)は問題となりません。

そうなると、【資料6】右辺のターゲットは、第1項(売上高利益率)と、第3項(財務レバレッジ)になります。


まず、【資料6】右辺第1項の「売上高利益率の最適解」は、どうやって求めるか。
これは次の【資料9】に示す「タカダ式操業度分析」を用います。
【資料9】タカダ式操業度分析
画像

上記【資料9】にある最大操業度売上高(横軸上の点K)を、【資料6】右辺第1項の「売上高」に代入します。

上記【資料9】にある線分GDは、経済学の利潤最大条件「限界収入MR=限界費用MC」を満たすものです。
この線分GDを、「タカダライン」と呼びます。
このタカダライン(線分GD)を、【資料6】右辺第1項の「利益」に代入します。

以上より、【資料6】右辺第1項(売上高利益率)の「最適解」が確定します。
なお、【資料9】は、次の受賞論文5ページ目の〔図表6〕の抜粋です。
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』(PDF 32枚)
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国立国会図書館所蔵の論稿集は、こちら。
日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF 12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田直芳

ところで、上記【資料7】の記事では、日興アセットマネジメントの話として、「利益率が低い原因を突き詰め、価格支配力などを重視する経営に転換する必要がある」が紹介されていました。

「利益率が低い原因」を、どうやって突き止めるか。
残念ながら、現代の管理会計や経営分析では、それが不可能です。

可能にするのが、【資料9】のタカダ式操業度分析です。
その横軸上にある点K(最大操業度売上高)と、線分GDの関係が、「利益率が低い原因」を炙り出します。

実際の売上高が、点K(最大操業度売上高)より増えても減っても、売上高利益率は低下するのですから、「利益率が低い原因」を見つけるのは簡単です。


次に、【資料6】右辺第3項の「財務レバレッジ」です。
これは次の【資料10】に示す「最適資本構成タカダ理論」を用います。
【資料10】最適資本構成タカダ理論
画像

上記【資料10】にある「最適な自己資本比率」は、「自己資本比率の最適解」のことです。
この逆数が、「財務レバレッジの最適解」となりますから、これを【資料6】右辺第3項に代入します。

以上より、次の【資料11】に示す「自己資本利益率ROEの最適解」が求められる、という仕組みです。
【資料11】
(自己資本利益率ROEの最適解)
 =  (売上高利益率)  ×(総資本回転率)×   (財務レバレッジ)
        ↓             ↓              ↓
 =(タカダ式操業度分析)×(総資本回転率)×(最適資本構成タカダ理論)

従前ブログ『企業価値とファイナンスの革新を目指して 実務に役立たない理論を学ぶ恐怖』では、次の【資料12】を掲載しました。
【資料12】
画像

上記【資料12】は、「タカダ式操業度分析」と「最適資本構成タカダ理論」とを、貸借対照表と損益計算書とに当てはめたものであり、次のPDFファイルで説明しています。
【資料13】
『高田直芳の実践会計講座「経営分析」入門』

上記【資料11】の式は、【資料12】や【資料13】の説明に、ぴたりと当てはまるのでした。
これが「タカダ式コンサルティングの体系」です。

なお、【資料11】の式の、具体的な展開については、他のブログ『自己資本利益率ROEと他人資本比率の因果な関係』を参照。


最後に余談を一つ。
上記【資料7】の記事では、「過大な販管費」がヤリ玉として上げられていました。

この販管費の正体は何か。
次の関連ブログの最終段落で、その正体を解き明かしています。
【関連ブログ】日本のメーカーを撹乱させたスループット会計

過大なのは、人件費や物件費といった「ただの販管費」ではないので、念のため。

〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕

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以下は、直近のブログ(50件程度)のタイトルだけを表示しています。

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