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新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』
(PDF 32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田 直芳

日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』
(PDF 12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田 直芳

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zoom RSS 公認会計士高田直芳:東芝問題まとめ

<<   作成日時 : 2016/12/30 02:00   >>

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東芝問題まとめ


東芝問題をまとめたブログの一覧は、下記【資料8:関連ブログ】にて。

さて、東芝の不適切会計(不正会計・粉飾決算)について、「なぜ、刑事責任を問われないのか」と、憤りを感じている人がいるかもしれません。

あなたのその憤りは、現代の会計学の立場では、まったくの見当外れであることを、以下で証明してご覧に入れましょう。

会計学は、財務会計論と管理会計論という、2種類の体系から構成されます(公認会計士法8条2項1号)。

このうち、法令や会計基準などで定められていない理論を扱う会計学を「管理会計」といい、例を示すと次の【資料1】になります。
【資料1】

  • ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)

  • 正味現在価値法、回収期間法、内部利益率法

  • 直接原価計算、原価企画、活動基準原価計算、直接原価計算

  • 機会原価(opportunity cost)や機会損失(opportunity loss)

  • CVP分析(損益分岐点分析・限界利益分析・線形回帰分析)

  • D/Eレシオや加重平均資本コスト率(WACC)などを用いた経営分析


法令や会計基準で定められていないものを、何でもかき集めたものが、管理会計だといえます。

会計を真正面から学んだことがなくても、【資料1】に掲げた用語はそれとなく理解している人が多いことでしょう。


概略を説明したところで、冒頭の問題を繰り返します。

上記【資料1】に掲げた管理会計を少しでも学んだ人が、「東芝の不適切会計は刑事責任を問われるべきだ」と主張するのは「見当外れも甚だしい」ということです。

なぜか。


上記【資料1】にあるCVP分析に注目します。

これは損益分岐点分析や線型回帰分析とも呼ばれ、現代の管理会計において、絶対的通説として君臨する理論です。

管理会計を学んだ人が100万人いるとするならば、そのうちの99万9999人が「CVP分析は、絶対的に正しい」と信じている理論でもあります。


CVP分析は、次の【資料2】を用いて説明されます。
【資料2】CVP分析(損益分岐点分析・線形回帰分析)
画像

上記【資料2】の中空に「損益分岐点P」があり、ここから垂線を下ろしたところに「損益分岐点売上高Q」があります。

実際の売上高が損益分岐点売上高Qを超えると、売上高線は総費用直線を上回るので、黒字決算=利益となります。

上記【資料2】において、実際売上高を横軸上の線分OXとすると、利益(黒字決算)は右端にある線分DCで表わされます。

線分DCで表わされる「利益」は、営業利益・経常利益・当期純利益、いずれも当てはめることができます。


上記【資料2】において、線分OXで表わされる実際売上高が2倍に増加すると、線分DCで表わされる利益も(2倍になるわけではありませんが)増加します。

線分OXで表わされる実際売上高が3倍に増加すると、線分DCで表わされる利益も(3倍になるわけではありませんが)増加します。

以上の説明で明らかなように、会計の世界で絶対的通説として君臨するCVP分析は、無限の利益拡大を保証する理論なのです。

損益分岐点売上高よりも右側で損失が発生する(赤字決算に転落する)ことを、決して認めない理論だ、と言い換えることができます。


東芝で問題となったのは、ある決算期に負担させるべき費用を、翌期以降に繰り延べてしまった点にあります。

そこで、東芝の不適切会計に憤りを感じる人へ質問です。

ある決算期に負担させるべき費用を、翌期以降に繰り延べる会計処理が、どうして不適切の誹(そし)りを受けなければならないのでしょうか。

もし、ある決算期に負担させるべき費用を、正直にその決算期に負担させて損失になって(赤字決算に転落して)しまった場合、むしろ「無限の利益拡大を保証するCVP分析」に反するではないですか。

「無限の利益拡大を保証するCVP分析」、すなわち、絶対的通説の立場からすれば、損失になりそうな(赤字決算に転落しそうな)案件がある場合、費用の一部を翌期以降に繰り延べるのは「極めて適切な会計処理」になるのです。

あるいは、CVP分析の正当性を信じる人は、「東芝の赤字案件は、上記【資料2】の損益分岐点Pよりも左下にあるのだ」と主張することでしょう。

そうであるならば、もっとがんがん、インフラ事業でも原発事業でも半導体事業でも、採算を度外視して安値受注すればいいのです。
売上高が増えていけば、やがては損益分岐点Pを超えて、無限の利益拡大が実現されることでしょう。

それが、99万9999人が「絶対的に正しい」と信じている、CVP分析の理論的な帰結です。

したがって、CVP分析に基礎を置いた管理会計を、少しでも学んだことのある人が、東芝の不適切会計を批判するのは「見当外れも甚だしい」となるわけです。


もちろん、いま述べたことは詭弁です。
どこに誤りがあったのでしょうか。

「誤謬の原因」は、上記【資料2】のCVP分析(損益分岐点分析・限界利益分析・線形回帰分析)そのものにあります。

企業実務をよくよく観察すると、次の【資料3】に示す事実を観察することができます。
【資料3】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。

以上の観察から明らかなように、企業のコスト構造は、無限回数の複利計算構造を内蔵していることがわかります。

それを数式や図表にまとめて、賞を得たものが、次の【資料4】に示す論文です。
【資料4】
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』(PDF 32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田直芳

国立国会図書館所蔵の論稿集は、こちら。
日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF 12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田直芳

上記【資料4】に収録してある図表を手直ししたものを、次の【資料5】に掲げます。
【資料5】タカダ式操業度分析
画像

上記【資料5】にある総費用曲線ABCDEは、複利関数(正確には「自然対数の底e」を用いた指数関数)で描かれています。


企業業績が、上記【資料5】の赤色の点A1にあるとき、利益は線分A1A2の高さで表わされます。
企業の業績が向上し、上記【資料5】の赤色の点B1にあるとき、利益は線分B1B2の高さで表わされます。

企業の売上高が、赤色の点A1 → 赤色の点B1 → 黒色の点C → 赤色の点C1、へと増加していくとき、利益(線分A1A2や線分B1B2)も増加していきます。

ところが、【資料5】では、利益が無限に拡大することを保証していません。
企業の売上高が、黒色の点Dを超えて、赤色の点D1にあるとき、線分D1D2の高さは縮小に転じます。
赤色の点E1にあるとき、線分E1E2の高さはさらに縮小します。

すなわち、企業のコスト構造は「日々複利の計算構造である」と捉えた場合、利益は無限に拡大するものではない、という理論的な帰結が導かれます。

したがって、ある決算期に負担させるべき費用を、翌期以降に繰り延べる会計処理は「不適切だ」となります。


東芝で問題視された「不適切な会計処理」は、上記【資料5】の右上にある「収益上限点E」を突き抜けてしまったのでしょう。

収益上限点Eよりも右側では、総費用曲線が売上高線を上回りますから、確実に損失が発生します。

収益上限点Eよりも右にある状態を、絶対的通説たるCVP分析に無理矢理合わせようとするならば、「不適切な会計処理」を行なわざるを得なくなる、というわけです。


以上のように、東芝の不適切会計を「粉飾決算だ」と批判できるのは、上記【資料5】の場合に限定されます。

これが、99万9999人に対して、たった一人で対抗する「タカダ式操業度分析」です。

日本だけでなく欧米の書籍や学術論文などで、この百年以上もの間、誰一人として思いつかなかった理論が、上記【資料4】の受賞論文や【資料5】の図表に込められています。


不適切会計に手を染めた東芝にこれから襲いかかるのは、巨額の減損損失と債務超過。
【資料6】日本経済新聞2016年12月28日

東芝は27日、2017年3月期に米国の原子力発電事業で数千億円(数十億ドル)規模の減損損失が出る可能性があると発表した。


減損損失と債務超過については、次のブログを参照。
【資料7:関連ブログ】

話を【資料2】に戻しましょう。
【資料2】にある総費用直線は、1次関数で描かれています。

1次関数とは、単利計算構造のこと。
すなわち、CVP分析の本質は、単利計算構造に基礎を置いていることがわかります。

このように、単利計算構造のCVP分析に立脚した会計を、「古典派会計学」といいます。

上記【資料1】にある、直接原価計算・原価企画・活動基準原価計算も、単利計算構造に基礎を置いた理論であり、古典派会計学に属します。

なお、間違えてならないのは、線形回帰分析そのものに、誤謬があるわけではありません。
何の思慮もなく、管理会計論や原価計算制度などに、線型回帰分析を適用する古典派会計学に誤りがある、と述べているのです。


上記【資料1】にあるディスカウント・キャッシュフロー(DCF)は、「複利計算だぞ」と反論があることでしょう。

いえいえ、ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)は、年に1回か2回の「とびとびの複利」であり、DCFに「無限回数の複利計算」という思考はありません。

見当外れの主張をしないように。

企業のコスト構造は「複利計算構造を内蔵している」にもかかわらず、それを「単利計算構造」や「とびとびの複利計算」で解き明かそうとする古典派会計学が、そもそもの「見当外れ」なのだということを自覚してください。


単利計算構造のCVP分析を信奉している99万9999人に警告しておきます。

損益分岐点を超えると「利益は無限に拡大するのだ」と主張するあなたがたに、東芝の不適切会計を批判する資格はないのだということを。

【資料8:関連ブログ】時系列〔降順〕
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