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zoom RSS 公認会計士高田直芳:マクロ経済天下国家の生産性とミクロ経済個別企業の生産性

<<   作成日時 : 2017/04/11 01:00   >>

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マクロ経済(天下国家)の生産性と
ミクロ経済(個別企業)の生産性



「生産性」という語で、日本経済新聞で検索を行なうと、過去1年だけで、2200件以上もヒットします。
参考に「東芝」という語で同様の検索を行なうと、1800件ほど。

日本人は「生産性」が好きなんだなぁ、と感慨に耽(ふけ)るのであります。

そして、必ず言及されるのが、「世界と比較して、日本の生産性は低い」と、ニッポン企業をくさすコメント。
「そんなに低いとは思えないのだが」というのが、現場の実感です。

メディアで取り上げられる「生産性の低さ」というのは、マクロ経済の話。
現場の実感は、ミクロ経済の話。

マクロとミクロでよく引き合いに出されるのが、合成の誤謬。
これを知っておかないと、意外な落とし穴に嵌(は)まり込む。

落とし穴に落ちないようにするためには、どうしたらいいのでしょうか。


生産性といっても、何種類かがあり、ここでは労働生産性に注目します。
次の式で表わされます。
【資料1】

    • Labor Productivity(労働生産性)
    • Added Value(付加価値)
    • Number of Employees(従業員数)

上記【資料1】の分母にある「従業員数」について、詳しくは調べていないのですが、外国籍の従業員を除外して集計するのが通例です。

【資料1】の分子の「付加価値」は、国内総生産(GDP)に基づきます。
これは国内で活動する外国籍の人たちの成果も含みます。

ですから、外国籍の人たちを積極的に受け入れている国の場合、その国の労働生産性は高くなります。

日本は諸外国と比較して、外国籍の人たちを多く受け入れている国なのかどうか。
マクロ経済の統計は、重要な条件が隠されたまま、表面的な数値だけで比較する点に注意しましょう。


次は【資料1】の分子にある「付加価値」について。
日本経済新聞では、次のように定義しています。
【資料2】日本経済新聞2016年3月4日

1人の労働者が働いた成果として、商品やサービスの付加価値をどれだけ生み出したかを示す指標。


付加価値は、次の【資料3】の式で算出することができます。
【資料3】
    (付加価値) = (当期純利益) + (固定費)

式の構造については、次の【資料4】に示す拙著170ページを参照してください。
【資料4】
[決定版]
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個人的な書籍に掲載された定義では「信用できない」というのであれば、財務省の外郭団体である財務総合政策研究所の、次のサイトで確認のこと。
【資料5】

マクロ経済の統計を鵜呑みにし、オカミの権威を示さなければ納得できないその姿勢では、経営戦略を誤るのも、もっともな話だといえるでしょう。


上記【資料3】の式によれば、付加価値を増やすには、右辺第1項の「当期純利益」を増やすか、第2項の「固定費」を増やせばいいことになります。

右辺第1項と第2項を同時に増やせば、付加価値は飛躍的に増大するでしょう。

それを従業員数で割ったのが、【資料1】の労働生産性になります。


ところが、です。
そこに大きな落とし穴が待ち受けています。

例えば、日本経済新聞の過去1年間の記事で、「固定費削減」という語で検索すると、96件もヒットします。
猫も杓子もと固定費削減に取り組むのは、昨今の経営課題の一つだといえるでしょう。

しかしながら、固定費の削減額以上に、【資料3】の右辺第1項にある「当期純利益」を増やさなければ、付加価値は減少する一方となります。

しかし、これは、おかしい。


固定費削減で、猫と一緒に杓子で肩を叩かれるのは、モノよりも、ヒトです。

モノを売却するには半年や1年の時間を要しますが、ヒトの給与は管理職を中心に、明日から下げようと思えば下げられます。

残業代の未払い問題が起きるのは、人件費が、下方に弾力性を持っているからです。
硬直性ではありません。

かつてのマクロ経済学(特にケインジアンが好む経済学)では、「賃金には下方硬直性がある」と説かれていました。
いまや死語です。

賃金は下方にも弾力性があるのですから、それに嫌気がさした人材は、需要と供給の原則に従って職場から去ることになります。

職場を去るのは、有能な人材から順に、であって、無能な人材からではありません。
これが「グレシャムの法則」です。


有能な人材の流出は、ノウハウの流出になりますから、【資料3】の付加価値を急速に減少させます。
    → 付加価値が減れば、【資料3】の右辺第1項の当期純利益を急速に減少させます。
      → これはさらに、【資料3】の左辺にある付加価値を減らします。

こうした「負の連鎖」を、スパイラル現象(きりもみ状態)といいます。


ときどき、「固定費を削減せよ。付加価値を上昇させよ」というスローガンを掲げる企業に、お目にかかることがあります。

これが如何に矛盾したものであるか、以上の説明で明らかでしょう。
1人あたりの生産性を上げようとして、コスト削減に取り組むことは、付加価値を逆に減らすことになります。

これは、ミクロ経済の中で起きる「合成の誤謬」です。

結論として何を申し上げたいかというと、企業の経営戦略は「ナイフエッジの上を歩くようなものだ」ということです。

〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕

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