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新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』
(PDF 32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田 直芳

日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』
(PDF 12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田 直芳

パワーポイント資料は、こちら。

zoom RSS 公認会計士高田直芳:固定費を削減すると業績は回復するのか【シャープの場合】

<<   作成日時 : 2015/05/18 01:00   >>

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固定費を削減すると、業績は回復するのか
【シャープの場合】



2015年5月15日付の日本経済新聞では、シャープの高橋社長との一問一答が掲載されていました。
一部を引用すると、次の【資料1】の通り。
【資料1】シャープの高橋興三社長との一問一答

シャープの高橋興三社長は14日、都内で記者会見をし、経営危機が再燃したことについて「外部環境の変化に弱い経営体制だった」と述べ、カンパニー制導入や固定費削減を進める方針を示した。(日本経済新聞2015年5月15日付)


上記の記事で注目すべきは「固定費削減」です。

このブログ記事を執筆している時点で、過去1年間の日本経済新聞において「固定費削減」「固定費の削減」「固定費を削減」で検索すると、延べ80件もヒットします。
固定費削減は、業績回復のためのキーワードであるかのような扱われかたです。


ところが、です。
このキーワードには「理論上の瑕疵」があることを、次の受賞論文の立場から論証してみましょう。
【資料2】
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』(PDF 32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田直芳

国立国会図書館所蔵の論稿集は、こちら。
日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF 12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田直芳

管理会計や経営分析の世界で、ときどきウンザリしてしまうのは、猿真似や孫引きが横行していることです。
他者を批判するのであれば、オリジナルの対案を示す矜持を持つべきです。

学術論文で「賞」の一つも獲らずに、管理会計論を語ったり原価計算システムを開発したりするのは、とても恥ずかしい。


さて、コストを削減するにあたり、管理会計などの教科書では、次の2通りがある、と説明されます。
【資料3】コストの削減方法

  1. 変動費の削減(正確には、変動費率の低下)

  2. 固定費の削減


書籍やビジネスセミナーでは、上記【資料3】が必ず紹介されます。


シャープに限らず、コスト削減の関心は、変動費よりも固定費に向けられます。
なぜなら、変動費は主に材料費や外注費から構成され、これは外部業者との厳しい交渉が予想されるからです。

業績が悪化している企業は、掛け取引を拒絶され、現金取引を要求されます。
ましてや、価格引き下げ交渉など不可能です。

それに対して固定費は、社内で発生するコストであり、経営者の号令一下、無理がきく、という特徴があります。
固定費削減の中で、不動産売却よりも、人員整理が優先されるのは、さらに無理がきくからです。

リストラというと、まずは人を減らせ、となるわけです。


業績回復のためには「固定費を減らせ」という「猿真似コンサルティング」が横行するのは、次の【資料4】の「孫引き図表」が氾濫しているからです。
【資料4】CVP図表・損益分岐点図表
画像

上記【資料4】の図表は、次の関連ブログで紹介した【資料2】の図表と、似ているようでいて微妙に異なります。
【関連ブログ】

2種類の図表は、どこが異なるかというと、図表の右側にある「CVP変動費」と「CVP固定費」の上下関係です。
上記【資料4】では、CVP固定費が上、そしてCVP変動費は下に位置しています。

上下関係が入れ替わっても、損益分岐点の位置や、線分DC(営業利益や当期純利益)の高さに変わりがないのが、上記【資料4】の特徴です。


なお、CVP固定費などに「CVP〜」という冠を付けているのは「CVP分析に基づく〜」という意味です。

CVP分析は、損益分岐点分析・限界利益分析・線形回帰分析とも呼ばれ、現代の管理会計や経営分析の世界において、絶対的通説として君臨する理論です。

世に100万人の会計専門家や企業経営者がいると想定した場合、そのうちの99万9999人が信奉している理論でもあります。


上記【資料4】で重要なのは、線分DEで表わされる限界利益です。
貢献利益や変動利益とも呼ばれます。

線分DEで表わされる限界利益をぐっと睨んでいるとと、コスト削減とそれに伴う業績回復へのヒントが見つかります。

固定費削減とは、線分ACを、下方へ平行移動すること。
したがって、線分CE(CVP固定費)は縮小することになります。

と、ここで面白い現象が生じます。
例えば、固定費を10億円削減すると、線分CE(CVP固定費)は10億円縮小します。
すると、線分DC(利益)が10億円分、伸びるのです。

外部業者との価格交渉を回避したいという思いも重なって、コストを削減する場合には、変動費よりも固定費のほうが強く主張される根拠になります。


ところが、以上の主張は「理論の歪曲」にすぎず、こざかしいにも、ほどがあります。

まず、固定費を削減するということは、変動費の割合が高まるということ。
これは、「生殺与奪の権」を、外部の者に握られることを意味します。

外部の業者から「オマエのところには、商品(または材料)を卸さないよ」と言い渡されたら、万事休すです。
ひたすら頭を下げるしかなく、商品や材料の仕入れ価格は急騰します。

一方、他社との差別化を図れる製品がなくなるのですから、他社との価格競争に巻き込まれ、販売価格は急落します。

固定費削減の先にあるのは「薄利多売の消耗戦」であり、「外部環境に翻弄される未来」になります。


それにも関わらず、企業経営者は、なぜ、「固定費を削減しよう」と主張するのでしょうか。

答えは、上記【資料4】にある線分DE(限界利益)は一定に保たれる、と錯覚している点にあります。
したがって、線分CE(CVP固定費)を10億円削減すると、線分DC(利益)は10億円増加するのだと。

そのように錯覚しているというか、理論を歪曲している人たちが、意外と多く存在します。


限界利益が、どのような構成になっているのかを、次の【資料5】で確認します。

【資料5】
   (限界利益)=(利 益)+(CVP固定費)
          ↓
   (線分DE)=(線分DC)+(線分CE)

CVP固定費(線分CE)を削減すると、利益(線分DC)も減少します。
この二重の「スパイラル効果」によって、限界利益(線分DE)は加速度的に減少します。
上記【資料4】の外枠にある正方形は、加速度的に収縮していくのです。

CVP分析に基礎を置く現代の管理会計・原価計算・経営分析には「理論上の瑕疵」があることを、上記【資料2】の受賞論文で証明しています。
【資料4】の外枠にある正方形が縮小するような動画を制作しても、CVP分析に内在する「理論上の瑕疵」は治癒されません。

現実には、「瑕疵ある理論」を、さらに「歪曲」しようとする人たちがいる。
これが、業績回復への道のりを複雑にしています。


上記【資料2】の受賞論文が難しい、というのであれば、次の書籍を参照してください。


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日本実業出版社
2009-07-01
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